▼突然、一度に11人家族▼
アメリカでは、長らく『大草原の小さな家』のインガルス一家が注目されてきた。開拓時代の古き良きアメリカ。決して豊かではないが、優しく威厳ある父親、慈悲深い母親、素直な子どもたちのいる家族。誰もが「理想的」と認める家族像だった。開拓時代から100年以上が経った。「ライフ」誌11月特別号に、「アメリカの家族」という大きな特集記事が掲載されていた。そこには、実に現代アメリカを象徴する家族が紹介されていた。
いまから6年前、ワシントンでテレビ局のカメラマンをしていたリック・アームストロング氏44歳とボルティモアで学校関係の秘書をしていたキャシー・ディフェリスさん35歳が結婚したことは、ちょっとしたニュースになった。というのも、結婚式の教会にずらっと8人の子どもたちが並んだからだ。リックには17歳のトッド、15歳のライアン、10歳のジョーという3人の息子と、23歳のタニア、19歳のアンジェラという2人の娘がいた。タニアは先妻の娘であり、タニアとアンジェラはすでに独立していた。キャシーには14歳のニック、11歳のベンという2人との息子と、ブリトニーという15歳の1人娘がいた。
タニアとアンジェラを除く8人家族に必要な7ベットルームのある新居は、結婚当時完成していなかった。そこで一家は数ヶ月の間、3ベットルームしかないリックの家で生活することになった。両親とブリトニーが1部屋ずつ、ライアンとジョーはもとの部屋を共有、そしてトッドとニックとベンは哀れにも地下室で暮らすことになった。両親がキャシーの妊娠を告げるや、すでに10代になっていた子どもたちは思わずこう言った。「バース・コントロールは?この状態を見てよ!」。
6年もの間、家の中での決まり事などをめぐって、様々なやりとりがあったという。けれどキャシーとリックは今も離婚をせず、一緒に暮らしている。5歳になった9番目の息子ジェイコブはアンジェラの4歳になる娘ジェンナと遊ぶ。タニアは息子のマディソンをキャシーに見せにくるようにもなった。リックの息子トッドは自分の家族についてこう語っている。「僕には義弟が2人、半分血のつながった弟が1人、本当の弟が2人います。また義姉が1人、半分血のつながった姉が1人、本当の姉が1人います。でも、そんな兄弟姉妹がいることについては、別に何の問題もないけど」。
それにしても、この一家の子どもたちが、数年後結婚と離婚を繰り返したとしたら、もう大変だ。「この叔父さんとは2分の1、あの叔母さんとは4分の1、それから・・」。かなり面倒な複雑多岐化した血のつながりを、孫や曾孫に説明しなければならないキャシーとリックはさぞや大変だろう。なぜって、家族は拡大する一方にあるのだから。継親のいる家族を「ステップ・ファミリー」というが、事実アメリカでは、近い将来人口の50%がステップ・ファミリーの一員か、その親戚になる、との予測が立てられている(1999年10月31日放送、NHK「世紀を越えて」より)。▼日本の離婚・再婚事情▼
離婚が増加傾向にある、というのは何もアメリカだけではない。亀山早苗著『二度目の結婚』(ネスコ、1999年)によれば、1998年だけでも日本における離婚数は24万組を超えている。特に、結婚5年未満の新婚カップルと結婚15年以上の熟年カップルの離婚数が増加しているという。ところで、この本では現代日本の離婚・再婚事情がかいま見られる。どうも日本人の両親は再婚に先立ち、ステップ・ファミリーを上手く作っていけるかどうかという親としての悩みよりも、「もう一度幸せになっていいのだろうか」と切なく考える、一人の女性・男性としての気持ちの方を少なからず先行させるようなのである。
けれど先の「ライフ」誌では、そんな親当人の個人的な感情はあっさりと片づけられてしまっていた。それはそうである。親の勝手な都合が作り出したステップ・ファミリーのしわ寄せは、すべて子どもに降りかかってくるからだ。さらに言い換えるなら、人間の個人的な欲望から離婚と再婚が繰り返された結婚制度のツケ--近代社会以来放置・増殖され続けてきた人工的「制度」の痛いツケが、ステップ・ファミリーという奇妙な家族形態を生み出したのだから。アメリカ社会はようやくそのことに気づき始めたのかもしれない。
農村を基盤とした拡大家族でもないのに、日本の人口1億2000万人の半分がみんな親戚―。起こりうる近い将来のこうした事態を、あなたはどう考えるだろうか。