1. 卒論の要件 2. この要件を見くびらないこと 3. 学生のつぎは学士です 4. 本気で書きたいものを選ぶこと
5. 卒論特有の期限・提出方法 6. 「卒論論題提出」について
なぜこの要件かの理由は簡単です。なにかもっともらしい社会学とか経済学とかの本を1冊だけ探し出して、これをなぞり、50枚程度にまとめて出したようなものは受け付けない、ということです。
ではなぜそのようなものを受け付けないかといえば、第一に「ひとかどの本」は50枚などという中途半端な要約を受け付けません。数行で論旨概要の要約に止めるか、さもなければ相手と同じほど読み、ときに同じほど書くことになります。このようなことをもしやる人がいれば止めはしませんが、実際には学部生である諸君には勧めにくいです。
なお、演習2、演習1の諸君の中でたまたまこれを見て、あえてこうした正統派のアカデミックな書き物に挑戦してみたいという人がいたら、できるだけ早くぼくに申し出て下さい。どのような内容か、それが適当かどうか、などを含めて相談に応じます。4年になってからでは遅いです。
また第二に、50枚程度の要約ですませられる本は、教科書程度のどうでもよい本であるのが普通です。とくに時事的な内容のものにこの種のものが多く困ったことです。マスコミ報道に便乗して本を出そうとするのでそうなるのだと思います。だから、お分かりでしょう、そのようなものを1冊などとは、考えれば馬鹿らしくてやる気が起きないでしょう? ましてそれを読まされるぼくの方は当然、怒り心頭に発するのです。
といって、時事的なテーマをやってはいけないと言っているのではありません。やるなら1冊などとけちなことは考えず、できるだけ多くを――またはすくなくとも複数を――集めて料理して下さい。これなら、上記の〔要件〕は結果的に満たされることになります。
ではなにを題材に選ぼうか、ということになります。何を書いてもいいらしいから書くときになって考えればいいか、とこの問題をなめてかかるとひどいことになります。事実、そのように考えて結果的に書けなくなる諸君が例年登録者の約4分の1程度います。
諸君の多くは、50枚以上の文章を書くのははじめてだと思います。10枚のレポートを5回書くと思えばいいとか、10枚のレポートを5回書けばいいと思う人がいるかもしれません。
しかし、このような考えは大変な間違いです。10枚のものと50枚のものとでは、草と樹ほど違います。諸君はプライドの高い人々ですから、書き出してからこれに気がつくと書き続けるのが嫌になります。自分で自分を許せなくなるのです。その結果、上記のように4分の1程度の人が書き始めた早々か、または締め切り間近でか、断念することになるのです。
ぼくはそうなってほしくないと思います。50枚書くのが実際にどんなことかを、4年間の最後の経験にしてもらいたいと思っています。実際卒論を書く意味は、ほとんどに場合このような経験を大学生の最後にやってみることにあります。
もともと大学では卒論が必修でした。必修であった理由は、大学を卒業したものは単に社会人になるのではなく学士になるものだったからです。大学の大衆化とともにこのような内容が現実にそぐわなくなり、多くの大学で卒論が廃止されていきました。また、学生に実用型の技術的知識を与えて大量生産することが趣旨の分野ではさらに早くから卒論を課さないところもありました。
幸いなことに、社学では、卒論が卒論を書くことができます。また相当数の学生諸君が卒論を書いています。はっきり言えばこれは「学生のつぎは学士」という学問的習慣の名残で、単位を容易に取るためではありません。その名残がどんなものであるかを知る機会が、50枚という枚数を自分で書くことのなかにあるのです。
というわけで4年生は就職活動とかのさなかにも、何を書くか考えつづける必要があります。それにつきぼくから「示唆」しておきたいことは、本気になれるものを書くのが一番だ、ということです。
一昨年度卒業生(99年3月の卒業生)の卒論の中でもっとも面白かったのは、『横浜中華街』というタイトルのものでした。これを書いたN君は凝り性であることはだれにも負けないが、いわゆる「勉強ができる」学生のイメージからはかなり遠いような学生でした。
この卒論は横浜中華街が黒船に通訳として乗せられて来た中国人によって作られたこと、彼らのマカオやスマトラでの前職、その出身省、などにはじまるさまざまな話題を記録したものです。資料の出所は主に県立・市立の図書館で、彼でなくても書けるといえばその通りだが、いざとなってそれに目が付けられるのは並のことではありません。「気になっていてこの際やりたいこと」をやってみた、とのことでした。
昨年度卒業生(2000年3月)の卒論は(ぼくとしてはこのページの効果もすこしあったと思いたいですが)例年になくよく粒がそろった美味なものが沢山ありました。別に紹介しておきますのでリンクを辿ってください。
料理は素材がよいことと料理法がよいことの2つが必要だそうです。どっちかを取れと強いられれば、ぼくは前者を取る人です。素材がよければそのままで食べておいしいからです。いざとなってよく考えてみたら文字にできる素材が3年間何もなかった、というケースも書けなくなるケースである可能性濃厚なので気を付けて下さい。
その他、卒論につぎのルールがあることは「履修要項」で知っていると思いますが、念のためここで一言します。
1)卒論は「指定の表紙」があります。(その中は手書きでもワープロ書きでも結構ですが、できればぼくが読みやすいようにワープロ書きにして下さい。)
2)卒論は「特定の提出日」に2階教務課に提出しなければ有効ではありません。要項に記載の日・時以外は受け取りません。これは定期試験同様と考えて下さい。例外は診断書のある病気、証明書のある鉄道事故などです。
6月末まで「論題と要旨」をぼくに届けることになっています。用紙は教務課にあります。演習3の諸君の卒論の進行状態を演習指導教授であるぼくが知るためです。これを機会に覚悟を決めるために必ず提出して下さい。この段階で未定の人は直接会って相談に応じますから教室・研究室においで下さい。6月末から前期定期試験直前程度まで遅れることは許容しますから、その代わりかならず守って下さい。
最後に付け加えますが、4年生は就職が忙しくて大学に出てくることができない、といわれていることはぼくも知っています。しかしぼくは、これが文字通りの事実と思っていません。4年生だから時間を守りにくいことは許容しますが、まったく出てこないことは許容しませんのでそのつもりで、年間を通して卒論に取り組むよう、最後に強く希望します。では呉々もご健闘ください。